2011-09-17

カルミナ・ブラーナの登場人物たち

カルミナ・ブラーナには、数多くのローマ神話やギリシャ神話のさまざま神々たちが登場し、その神々のエピソードを知っていることを前提とした比喩も多数出てきますので、登場人物を簡単にまとめてみました。

1. O Fortuna
2. Fortune plango vulnera
  • Fortuna(フォルトゥーナ)
ローマ神話に登場する、運命の車輪を司って人々の運命を決める運命の女神。
英語の「Fortune」の語源とされる。
チャンスは後からでは掴めないということを表しているために、Fortunaには後ろ髪がなく前髪しかないとされている。
カルミナ・ブラーナの2曲目中にも、
“Verum est, quod legitur,fronte capillata,
sed plerumque sequitur Occasio calvata.”
「本に書いてあることは本当だった、運命の女神は前髪ゆたか
でも、その後ろ側には髪は無く、掴むチャンスは少ないと」
という歌詞がはいっている。
タロットカードにもFortunaをモデルとした運命の輪のカードが存在する。
  • Hecuba(ヘクバ、ヘカベ)
ギリシア神話に登場する女王で、トロイア(イリオス)の王プリアモスの王妃である。
国王プリアモスと王子ポリテスは、ヘクバの目の前でトロイアに攻め込んだギリシア軍のネオプトレモスの手によって殺され。ケルソネソス国ポリュメストル王に預けておいた末子も王の裏切りによって殺され、プリアモスの血筋は絶たれる。
ヘクバは戦利品としてオデュッセウスに与えられたが、彼の元にいても悲しみにある彼女は、 オデュッセウスに懇願してポリュメストルと会わせて欲しいと願う。
了解した彼は、王と王子をトロイアに呼びだした。 ヘカベは二人の王子の目をえぐり、王と子達の復讐の代わりとした。
カルミナ・ブラーナでは、トロイアの王妃という最高位から、国を亡ぼされ夫子を殺され戦利品というドン底に落ちたヘクバを運命の輪の象徴としている。
3. Veris leta facies 
  • Flora(フローラ)
ローマ神話に登場する花と春と豊穣を司る女神。
彼女はかつてクローリスという名のギリシアのニンフ(下級女神)だったが、西風の神ゼピュロスによって
イタリアに連れて来られ、以後花の女神になったという。
  • Phoebus(フィーブス)
ローマ神話の太陽神アポロの別名。元々はギリシア神話に登場する神アポローンであるが、ホーメロス等で
ポイボス・アポローンと称されていたことが由来。
  • Zephyrus(ゼピュロス)
ギリシア神話の西風の神である。ギリシア神話における風の神々アネモイ達の中で最も温和であったゼピュロスは、春の訪れを告げる豊穣の風として知られている。
5. Ecce gratum
  • Cupido(クピード) (歌詞中ではCupidinis)
ローマ神話の愛の神(英語読みでキューピッド)
Cypris(キプリス) (歌詞中ではCypridis)
直訳では「キプロス島の女」となるが、ローマ神話の愛と美の神 Venus(ウェヌス 英語読みではヴィーナス)の別名。ギリシア神話におけるアプロディーテと同一視されている。海で泡から生まれ、西風(Zephyus)によってキプロス島に吹き寄せられ愛と美の女神となったことから、Cyprisの別名を持つ。
  • Paris(パリス) (歌詞中ではParidis)
ギリシャ神話に登場する英雄で、Hecuba(ヘクバ)の息子。「厄災を生む子」と占われたことから生後すぐに捨てられた。成長後にトロイア王の子であることが明らかになりトロイアの王宮に戻った。
その後、Venus (=Cypris)の助力によって、スパルタ王妃であるHelena(ヘレナ)を拐ってトロイアに連れ帰ったことで、スパルタ王の怒りをかい、トロイアはギリシア軍に攻められ戦争となった。
パリスは「アキレス腱」の名のもとであるギリシャ神話の英雄アキレウスの急所の踵に矢を射て死をもたらすなどの活躍をした英雄でもあったが、最後には占い通りトロイアに厄災をもたらし、激戦の末にトロイアは滅亡した。
8. Chramer, gip die verwe mir
この曲の歌詞には特定個人の名前は含まれていないが、原作中で2番目に長い400行にも及ぶ長大なキリスト受難劇の中から、イエスと会い悔悛する前の罪深い女であったマグラダのマリアと、男たちのやり取りの場面でのマリアの台詞を抜き出したものとなっている。
10. Were diu werlt alle min
  • chünegin von Engellant(イングランドの女王)
この女王は、イギリス王ヘンリー2世の王妃であるエレノアとされている。エレノアの祖父であるフランス王族アキテーヌ公ギョーム9世は、吟遊詩人の祖と云われ、周囲に多くの詩人を集めた人物で、エレノアも第2回十字軍遠征に吟遊詩人を従えて加わり、中世を代表する女性の花形であった。エレノアはフランス王ルイ7世の妻であったが、遠征からの帰還後に離婚しヘンリーと結婚しイギリス王妃となった奔放な女性であった。
カルミナ・ブラーナが発表された1937年の前年に、イギリス国王エドワード8世が、王位を捨て離婚歴のある女性シンプソン夫人と恋に落ちて王位を捨て恋人をとった事件が発生したことから、この詩が選ばれたとの説もある。
24. Ave formosissima
  • Blanziflōr(ブランツィフロール ← 仏語のBlanchefleur(ブランチフルール)のラテン語化)
中世の文学「Floris and Blanchefleur」に出てくるヒロインの名前、直訳すると「白い花」。キリスト教徒の娘であるBlanchefleurは、イスラム教支配下のスペインの王子Florisと幼なじみであったが、王子が異教徒と恋仲であるのを嫌ったスペイン王によって、Florisが留守の間にバビロンの王族に売り飛ばされた。王子はバビロンまで行き、Blanchefleurを奪い返してスペインに帰り、結婚したという物語。
  • Helena(ヘレナ)
トロイア国の王子Parisが奪ったスパルタ王妃の名前
  • Venus(ウェヌス)
  = Cypris(キプリス)
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(2011年 松戸市民コンサート合唱団配布用資料として作成、一部本ノート用に修正)

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