2011-07-16

【補足】カルミナ・ブラーナにおける中高ドイツ語の発音について

カルミナ・ブラーナで使用されているドイツ語は、中高ドイツ語と呼ばれている、中世の高地ドイツ語が使用されています。
中高ドイツ語がどのように発音されていたかについては、各種文献を参照することによって知ることができますが、カルミナ・ブラーナがカール・オルフによって作曲されたのは20世紀になってからのことであり、作曲者自身がイメージしていた発音との乖離が生じているようで、CDとしてリリースされている演奏録音でもこの部分の発音はさまざまです。(カール・オルフが録音に立ち会ったと云われる1950年代の古い録音でも現代ドイツ語に近い発音の部分があります。)
今回の演奏会用の対訳資料では、本来の中高ドイツ語の発音法資料及び数種類のCDの演奏録音の発音例をもとにした、折衷案的な内容となっています。中高ドイツ語の特徴的な発音は以下の通りです。

1)   wの発音
中高ドイツ語では、子音「w」の発音は、現代ドイツ語の[v]では無く半母音的の[w]となります。
しかしながら、「walt」のような語頭の「w」は[v]の発音となっている録音が多いため、
今回の対訳資料では[v]の発音を採用しています。
ズービンメータ指揮の録音では、[w]の発音を採用しているものも存在します。
2)   chの発音
中高ドイツ語では、子音「ch」の発音は、すべて[x] (現在ドイツ語のachの語尾)の発音となり、
「ich」の発音も[ɪç]ではなく[ɪx]となります。これについても録音では [ɪç] となっているものが多いため
これにならっています。但し、「ich」の古い記法である「ih」が採用されている部分については、[ɪx] と
しています。
また、8曲目冒頭の「Chramer」や9番中盤の「Chume」のような語頭の「ch」も本来なら[x]の発音と
なりますが、こちらに関しても録音で多数を占める [k]の発音としています。
3)   zの発音
語頭または子音の後の「z」は[ts]、母音の後では[s]の発音となります。
4)   ieの発音
現代ドイツ語では「ie」の発音は[i:]と長母音になりますが、中高ドイツ語では[ɪε] または[ɪǝ]となります。
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2011年12月開催 第23回松戸市民コンサートの合唱団配布対訳資料の補足を一部編集

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