2018-10-14

男声合唱による10のメルヘン『愛する歌』

「それいけ!アンパンマン」の生みの親として知られている、やなせたかし(1919~2013)は、「アンパンマン」がヒットした時にはすでに70歳目前という、本人曰く「小器晩成」の漫画家です。当作のヒット以前には「手のひらを太陽に(1962年)」の作詩などで詩人として注目され、当時に書きためていた詩をまとめた詩集「愛する歌」第1 ~ 5集の出版によって、本職の漫画家よりも詩とその挿絵イラストを書く人として広く知られている時代が長く続きました。
やなせたかしにとって、詩とは子どもからお年寄りにまで多くの人に愛されるような、抒情性にあふれ、心によろこびをあたえるもので、本業の漫画と同一次元でとらえられる存在だったそうです。
作曲家の木下牧子は大学受験浪人中にこの詩集を書店で偶然に見つけ、受験勉強としての作曲とは別に自分自身の純粋な楽しみのため、十数編の詩に「うた」をつけて二部合唱にしましたが、その時点では一旦お蔵入りになったそうです。その後10年以上の歳月が経ち、音楽之友社の雑誌「教育音楽」に不定期で足掛け七年に亘って一曲ずつ掲載して行くという形で、以前に作った3曲に新たな7曲を加えた全10曲の同声二部合唱曲集として結実しました。学校教育用ということで比較的平易な旋律と和声の合唱曲ですが、世に浸透するにつれて歌曲や男声四部合唱用の楽譜が出版されるようになりました。本日は演奏時間の都合もあり、以下の6曲を演奏いたします。

1. 誰かがちいさなベルをおす(詩集 愛する歌 第1集(1966)より、「教育音楽」1990年 7月号掲載)
2. ひばり         (詩集 愛する歌 第2集(1967)より、「教育音楽」1990年 4月号掲載)
3. ロマンチストの豚    (詩集 愛する歌 第2集(1967)より、「教育音楽」1989年 4月号掲載)
4. 海と涙と私と      (詩集 愛する歌 第4集(1970)より、「教育音楽」1994年 8月号掲載)
5. 地球の仲間        (詩集 愛する歌 第2集(1967)より、「教育音楽」1988年11月号掲載)
6. さびしいカシの木    (詩集 愛する歌 第3集(1969)より、「教育音楽」1990年 8月号掲載)
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(2018年10月 ジョイントコンサート「コーラスの玉手箱」 プログラムの曲目解説原稿)

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